生活に合わせて必要なものを自分で作っていく暮らし
浅野 豪(31)
徳島県出身 2012年移住 2019年に一軒家を購入
一軒家を購入
出身は松茂町という上勝町から1時間半ほどの町です。大学を卒業後、上勝町の役場職員として入庁し、上勝での暮らしが始まりました。住みだして7年目のある時、住んでいる住宅の近くの家が空き家登録に出されていることを知り、何の気なしに家の中の写真を見せてもらったんです。そしたら思っていたより綺麗で、すぐに住むことができそうだなと思いました。この家を見た時に、これからも上勝町に長く住むのなら一軒家でもいいのかなと考え始めました。その後、希望されていた方が辞退を申し出たということを聞き、それならと購入を決めました。賃貸という方法もありましたが、意外と買えそうな金額だったので、買えるのなら買ってしまおうということで購入に至りました。
こだわりのキッチン。テーブルの他、収納棚や扉も自作。
必要なものを自分で作る楽しさ
家の中の物は所有者の方と協力して事前に片付けましたが、壁を塗り直したり、物をどかしたりと、実際に入る前にしかできない手直しは休みの日を利用して少しずつ準備をしました。屋根や床、水回りなどは現状のままでも生活することが可能だったので、業者を入れての大きな改修工事は必要ありませんでした。
いざ住み始めてみるとキッチンが暗く少し古臭い感じがして、ちょっと雰囲気を変えたいなと思い、せっかくなので家具を自作してみることにしました。大きい家具などを作るのは初めてだったので、大工さんに機材の使い方や工程などを教えてもらいながら少しずつ進めました。1つやっては1つ失敗を繰り返し、1ヶ月ほどかかり、ようやく家の雰囲気にぴったりなテーブルが完成しました。時間をかけて自分で作ったテーブルにはやはり愛着が湧きました。そしてひとつ出来ると、次はこれを作ってみよう、ここにはこういうものが欲しいなと、どんどん必要なものを自分で作っていく楽しさに目覚めました。時間はかかりますが、使用用途に合わせて自分が思うぴったりのサイズのものができるのは嬉しいし、出来上がったら人に見せて話したくなります。自分の家の物語を語れるのは最高です。
野菜づくりとコミュニケーション
この家に住み始めてから野菜も作り始めました。農作業もほとんどやったことがなかったんですが、自分で調べたり地域の人に教えてもらいながら四季それぞれで6~7種類の野菜を育てています。糖度が低かったり皮が硬くなってしまったり、まだまだ上手にはできませんが、それでも自分が作ったものだと不思議と美味しく感じます。その日に採れた野菜だけを使った朝ごはんや、旬の野菜で彩られた料理が食卓に並ぶととても幸せです。
自分で畑をするようになって人との関わりにも変化がありました。近所の人はみんな農業に携わっているので、農作業が1つのコミュニケーションツールになるんです。例えば「この野菜がうまく育たないんです」という話をするとみんな教えてくれるし話が広がる。そこから仲良くなって「うちの畑から好きなだけ持っていっていいぞ」とか関係が深まったりもする。一軒家を購入したことで新しくできた人間関係も嬉しいですね。
野菜の苗が植えられた畑
畑で採れたビーツとじゃがいも
上勝での暮らし
もし上勝に来ていなかったら、と考えるときがあります。市内で住んでいるときは基本受け身で、自分で楽しみを生み出すというよりは、お金を払って誰かに楽しみを与えてもらうようなイメージでした。「やることないなー。イオンでもいくか。」みたいな。上勝に住んでいると、自分の生活を自分でつくっていくのが基本なので自然と能動的になるし、生活の幅も広がる一方だと思います。あるものを工夫して、暮らしが豊かになるものをつくっていく。みんなナチュラルクリエイターだと思います。楽しみを自分でつくっていく今の暮らしはとても充実しています。
まだまだ作りたいものもたくさんあって、休みの日はほとんど畑作業か物づくりで終わることが多いです。縁側をつくって天気の良い日にのんびりしたいし、ポストを置く台も天然の木を使って作りたい。これからも楽しみながら色んなことをやっていきたいですね。
これから移住する人へのアドバイスやメッセージ
賃貸にしても売買にしても、所有者の方との信頼関係はとても大事だと思います。ここは所有者が女性の方だったので、家の中の物を片付けるのを手伝った時には「男手がいなかったのでとても助かりました」と感謝されました。あと、出来ることはほとんど自分でやって所有者の方にはできるだけ負担をかけないようにもしていました。前にも後にも双方が気持ちよく、良い関係でいれることがいちばんじゃないかなと思います。