私が見つけた守りたいもの

菅原由紀(29)
東京都出身 2015年移住

東京生まれ、東京育ち。いきなり四国の山奥へ

   生まれてから26年間ずーっと東京に住んでいました。保育士として仕事を始めたんですが、昔から写真に興味があったので、専門学校に行くことにしました。

   専門学校の実習で、アジアの国々を回ったことがあったんです。そこで出会った人たちはなんせ人懐っこくて、見ず知らずの私にすごく興味を持ってくれました。言葉は通じないのに、なんとかその人のことを知りたい、仲良くなりたいっていう気持ちがガンガン伝わってきて。正直、最初は警戒心もあったんですが、「いや、そうじゃないな」って思ってからは、身振り手振りと知っている英語で、なんとかコミュニケーションを取ろうと頑張りました。結果的にはホントに仲良くなって、会話を交わす上辺だけの関係ではなく、離れていてもお互いを気にかけるほどの深い関わりを持つことができました。

   日本に帰ると、それまで当たり前だった東京での人間関係が「さみしいなぁ。つまんないなぁ」って感じたんです。

   一度、東京とは別の場所で暮らしてみたいと思い始めた頃、震災後のボランティアで行った気仙沼の保育園や、福岡の知り合いの写真屋さんからお誘いを頂きました。
ちょうど同じ頃、元々知り合いだった㈱上勝開拓団の仁木さんが「上勝町に映像制作の会社をつくったから誰か一緒に働きたい人いませんか?」ってフェイスブックに書いているのを見たんです。上勝町には以前友達もいたので、一度だけ遊びに来たことがありました。そのときの印象は「めっちゃ山の中やなぁ」って。
気仙沼も福岡も楽しそうだとは思ったんですが、生活や仕事が一番想像できなかったのが上勝だったんです。逆にそれが面白そうだなと思って、上勝に行くことを決めました。

初めての漫才

   上勝開拓団は映像制作の会社です。番組のレポーター、ナレーション、イベントの企画から事務やバーテンダーまで、いろんなことをやっています。

   これまでは、いろどりの宿舎で暮らしていたんですが、古民家の空き屋をお借りすることができました。そこの集落の人から「秋祭りで漫才をやってくれんか」とお願いされました。最初は正直「え~やだな」と思ったんですが、集落の人たちが喜んでくれて、自分のことを知ってもらえるきっかけになればと思って、友達と二人でやりました。どうせやるからには絶対笑えるものにしたいと思って、台本も自分たちで工夫したので、どうしたらみんなに喜んでもらえるのかっていうことを深く考えるきっかけになりましたね。初めて会う人でも「秋祭りで漫才やりました」って言ったら「あぁ、あの子ね!」と分かってもらえるし、私たちがやったネタを未だに真似してくれる人もいて、やってよかったなと感じています。

   上勝に来て、アジアで感じたような、上辺だけの関係ではなく、人と人との深い関わりができているなと思います。ただ話すだけでなく一緒に作業をしたり、一緒にお酒を飲み交わしたりしながらお互いにどんな人なんだろうと興味を持つ人間関係が今ここで叶ってるなって感じています。

※1上勝開拓団はBar IRORIというBarを週末の夜に営業している

晩茶への想い

   上勝では昔から各家庭で、晩茶という特殊な製法のお茶が作られてきました。上勝の生活にはなくてはならないもので、私も初めて飲んだときから晩茶が大好きです。ですが、一般的なお茶と違って、一番暑さの厳しい7~8月に、お茶摘みをはじめとした工程が全て手作業で行われるため、高齢化によって作りたくても作れない家が増えてきています。

   昨年、晩茶を盛り上げるためのイベント「晩茶祭り」の企画・運営を担当したんですが、炎天下の中お茶を摘んでいるおばあちゃんの横で、写真を撮ったりお話を聞いたりしていると、「いや、そもそもお前茶摘みしろよ」って自分自身にすごく思って。もちろんPRも大事ですが、そもそも晩茶がなくなってしまったら意味がないので、まずは私自身も晩茶づくりの戦力になれるぐらいにはお茶を摘めるよう、今年の夏は積極的にお手伝いに行きたいなと思っています。

   晩茶のほかにも、上勝には地元の人が昔から大事に守ってきたものがたくさんあります。私自身がいいなと思ったものを、この先一緒に守っていきたいし、この町自体も何かしらの形で残していきたいなと思うようになりました。

これから上勝に来る人へ

   私も上勝に来るまでいろんな不安がありましたが、来てみたら同年代は多いし、町民の人もウェルカム。飛び込んだらやっていけるんじゃないでしょうか。
まずは行動に移すことが大切じゃないかなと思います。

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