秘境シェフの挑戦は続く

表原 平(34)
徳島県出身 2014年移住、開業。

 

上勝との出会いは観光


元々徳島出身で、板前である兄の影響で料理人を目指しました。21歳で単身上京し、フランス料理店で働いた後、イタリアンの店「アルケッチャーノ」に入社しました。東京スカイツリー店の立ち上げに携わり、アルケッチャーノプロデュースの淡路島野島スコーラでシェフとして従事してきました。
独立を意識し始めた頃、中学時代の恩師が上勝町で働いており、「一度遊びにおいで」と誘われ、観光で訪れたことがこの地での起業のきっかけとなりました。
上勝町の第一印象はとにかく田舎で何もない。コンビニもファストフードもない。でも自分の料理でこの町にお客さんを呼べる可能性があるんじゃないかと思いました。

待つだけで人は来ない、作り上げてきた自分のスタイル


大変なことはとにかく「一に集客、二に集客」ですね。
上勝町を知ってもらうきっかけに「ゼロ・ウェイスト」や「彩」が大きな要素としてあると思うんですが、うちはどちらも前面に出してやってるわけではないので、その延長線上ではペルトナーレはヒットしないし見つけてもらえない。そこに乗っかっていないので結構大変な部分はありますね。もちろんゼロ・ウェイストの取り組みは町の分別に則ってやっています。「彩」ももっと使いたいと思うことはあるんですが、イタリア料理ではなかなか難しい。自分で料理に合うものを採りに行ったりすることはあります。

上勝町でリストランテを開業したことは、良くも悪くも目立ってしまったところはあると思います。目立つつもりはなかったんですが、あんな秘境の田舎でリストランテをやってる奴がいるぞと。でもそれで話題になるのも一時的なものですから、そこからいかに固定客を獲得できるかどうかが大事なので。今のところは何とかやっていけていて、ありがたいことに四国の海の向こうから定期的に来てくれるお客さんもいます。

創業して丸9年になりますが、始めた当初と今を比べると、自分の料理観のようなものがある程度できてきたかなと思います。上勝の四季の食材をはじめとして、川魚の鮎や天魚(アメゴ)、鰻やスッポンなど、通常のイタリアンレストランでは珍しい食材ですが、この地域の地元産に徹底してこだわってきたことで自分のスタイルを少しずつ積み重ねて作ってこられたので、それをもっと成長させていきたいですね。

 

リニューアルオープンで理想のサービスを


これからやっていきたいのは宿泊です。一度コロナ禍の影響でストップしてしまい計画の変更などもありましたが、ついにこの春オーベルジュ(郊外でその土地の食材を使った料理を振る舞い、宿泊もできるレストラン)という形でリニューアルオープンします。
店の経営にはふたつのアプローチがあると考えています。ひとつは客単価を下げて客数を上げる、もうひとつは客単価を上げて客数を下げる。どちらも売上的には変わらないですが、それならできる限り丁寧なサービスを提供できた方が、お客さんにもっと上勝町を感じていただいてより料理と時間を楽しんでいただけるのではないか、という仮説を持って取り組んでいきます。

 

上勝での起業


暮らしやすさの面では、上勝町は不便かもしれません笑 正直便利とは真逆のところにありますから。
でもここに住んでいることが、地域の食材を紹介してもらえるきっかけになることもあります。同じ土地で暮らしている者として、応援してもらえているのかもしれません。

上勝で起業を考えている人には「やめておけ」と言いたくなりますね笑 半分冗談ですが、こればかりは業種にもよると思います。
例えばエディターやクリエイターなど、ネットがあればどこでも仕事ができる人なら、上勝町は経費も安いですし、場所さえ気にいれば良い選択肢になりますよね。集客が必要な業種は、その人に底力がないと本当に大変だと思います。この場所ならではの価値を作れる人なら可能性はあると思います。

 

Ristorante Pertornare

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