たくさんの人に愛されるような生き方を目指して
井上 結香(33)
高知県出身 2018年移住
会社員時代にたまたま聞いた上勝の話から
専門学校を卒業してから事務職の仕事に就き、このままずっとこの仕事で生きていくのかなと将来にモヤモヤを感じていたある日、知人からたまたま上勝町の話を聞きました。年配の方々が生き生きと働き、移住者が起業をして町をどんどん発展させていて、調べるほどに面白く、とても興味が湧きました。以前から”なにか自分で仕事(起業)をしてみたい”という気持ちは持っていたものの、何から始めればいいのか分からずにいた私にとって、これは起業するための知恵や術が学べるチャンスかもしれないと思いました。すぐに(株)いろどりが行っていたインターンシップに参加し、農家さんのお手伝いや起業家の皆さんとお会いして話を聞かせていただきました。インターンシップ後は一旦高知に戻ったのですが、上勝での出会いや経験が忘れられず、移住を決意しました。
掛け持ちという働き方
移住してからしばらくは、インターンシップでお世話になった方にお願いし、農家さんのお手伝いや温泉のレストランスタッフ、当時そば処をしていたお店のアルバイトを掛け持ちして生活していました。掛け持ちで手間が足りない事業所や農家さんのお手伝いに入るほうが関わる人も経験できることも多いと思ったので、ひとつの場所に就職するのではなく、このスタイルを選びました。そのおかげで顔を覚えてもらうことも早く、仲良くなった方には連絡先を教えてもらい家に遊びに行かせてもらったり、興味があることに参加させてもらったり、飲み会等にも気軽に誘ってもらえるようになりました。このスタイルで働いていたからこそ今の仕事にも繋がったので、そういった機会に恵まれることが多いのがこのスタイルの良いところなんじゃないかなと思います。
やりたいと思っていたお店を始めることに
そんな生活を続けて2年経った時、神田(じでん)地区にある「神田茶屋」という場所を借りて、土日祝日のみで軽食を提供するお店を始めることになったんです。もともとは地元の人たちがボランティアで喫茶や足湯を行い、地域の人が気軽に集まることが出来る場所として建てられたところが、新型コロナウイルスの影響で長期休業となったことを知り、代わりに使わせてもらえないかと地元の方たちにお願いをして貸していただけることになりました。自分でお店をやってみたかったこともあり、自分が責任者になることで一気に知識も経験も増やすことができると思いました。もともとあったお店の看板を背負って始めた為にプレッシャーも大きく、地域の人に「前の方がよかった」と思われないか、サービスが悪くないか、自分自身のやり方で合っているのか等、色んなことが気になり、しばらくは不安と緊張で眠れない日もありました。しかし、始めてみると毎回飾り用のお花を持ってきてくださる方や、設備をチェックしてくださる方、どんなに忙しくても欠かさず食べに来てくれる方など、たくさんの方が気にかけて助けてくれました。そんな皆さんのおかげで最近ようやく楽しみながら営業ができるようになり、たまたまお店で一緒になった地元の人同士が「えっとぶり(久しぶり)やな~」とご飯を食べながら会話を弾ませているところを見ると、やってよかったなと嬉しく思います。
生き方は自分で選ぶ
起業は甘くありません。会社員だった頃は休日に友達と遊びに行ったり好きなことをしていましたが、今は休日があれば買い出しや仕込み、情報発信やメニュー開発など、自分の遊びや趣味は二の次です。好きなように仕事ができると考えていたところは甘かったと思います。安定した会社員時代に後悔がないかと言われればないこともないですが、ずっとやりたかったことが出来ている日々はとても充実しています。
「お金を稼ぐことは大事。しかしお金は死後の世界には持っていけない。人間はお金よりもたくさんの人に愛されることが人生で一番大事。」という言葉を以前どこかのサイトで見た時にすごく納得したんです。安定したお給料をもらって会社員で働くより、わたしは今の働き方や暮らしを通して、これからもたくさんの人に愛されるような生き方をしていきたいと思います。